最近、息子が聴き入っているジャズピアニスト・松本茜さんのライブに誘われた・・・
前日に彼女のアルバム『Memorise of You』を渡され、私も予習をさせられた・・・
サックスの川嶋哲郎さんは洗足学園のコンサート『Do Jazz Sennzoku’2017』で聴いたことがある。生憎の雨の中『あすねっと』に向かった・・・
雨の中を走り、駐車場に車を止めたら、直ぐ隣の車で息子の友だちが待っていた・・・
息子が彼の車で何か話し、会場に入った。
今日は指定席だったので客足も遅く、まだ疎らな場内に入ると、席は最前列中央の左側で丁度、松本茜さんの背中を見上げる位置であった・・・息子は大層悔やんでいたが、真近に観ることができた。
<1st ステージ> MC:松本茜
Home Town :松本茜
Over the Rainbow:ハルド・アーレン
Quiet Rain :松本茜
Take the A Train:ビリー・ストレイホーン
<2nd ステージ> MC:川嶋哲郎
Lamentation:川嶋哲郎
Thaw(雪どけ):川嶋哲郎
オブリビオン:アルストル・ピアソラ
浜辺の歌:成田為三
故郷:岡野貞一
松本 茜(まつもと あかね )は、 鳥取県米子市出身のジャズピアニスト。4歳からヤマハ音楽教室でピアノを習い始める。小学2年のとき、北村英治のコンサートで、ジャズと出合う。以降独学でジャズの作曲をする。
2004年、バークリー音楽大学の学費全額免除の試験に合格(入学せず)。
2006年、米子東高校を卒業。日本大学芸術学部放送学科に進学し、主に都内で演奏活動を始める。早稲田大学のモダンジャズ研究会にも参加。
という紹介記事があったが、北村英治のスイングジャズを聴いてジャズが好きになったのかなどと想像すると、微笑ましい限りである・・・
最初にソロで演奏した曲は、ふるさと米子をイメージして『Home Town』を作曲したと語った。次の『Over the Rainbow』は、川嶋哲郎さんとの掛け合いには興奮させられた・・・これがビバップなのであろうかと、私は密かに思いながら聴いた。
『Quiet Rain』は、今日のような雨の日に合った選曲で、素直に心に沁みた。
松本茜さんは、1939年にデューク・エリントン楽団のピアニストであったビリー・ストレイホーンが作詞・作曲した「A列車で行こう」の逸話を話してくれた。デューク・エリントン楽団へ入りたとやって来たビリー・ストレイホーンに対し、デュークは自宅への地図を書いてあげた。その地図に書かれた『A列車』が曲のモチーフになったと、微笑ましいエピソードを語ってくれた。この美談がその後のビリーの運命を決定付けたという話を知って、益々この曲が好きになったと茜さんは付け加えた・・・
この曲のタイトルにある「A列車」とはニューヨークのブルックリン東地区からハーレムを経てマンハッタン北部を結ぶニューヨーク市地下鉄A線(別名「8番街急行」)の名称だそうである。 私も何度かニューヨークへ行ったことがあるが、『地下鉄は危ない』と聞かされていたので一人で乗ったことはなかった。
でもある時、NY在住のIBMの方に連れられて、ブルックリンに向けてビクビクしながら地下鉄に乗ったことがる。夜遅かったが遠くにライトアップされた『自由の女神』を眺めたような気がする。 そんなことをぼんやり思い出しながら茜さんの話を聞いて、ほっこりした気持ちにさせてもらった。
富山県に生まれ、6歳からピアノ、12歳からトランペットを学び、高校でテナーサックスに転じ、岡山理科大学在学中にジャズを始めたという。
ところが、大学卒業後名古屋で一般の会社員として働いたが、大坂昌彦&原朋直クインテットの一員となってプロ・デビューし、このグループのアルバム『def』(1993年録音)に参加した。そして今、日本のジャズ・サックス奏者、洗足学園大学講師であると紹介されていた。
一見強面な川嶋哲郎さんだが、お話しを始めると、とても親しみ易い方であった・・・
そして、彼は以外にも多弁であることに観客は驚かされたのである・・・
一曲目の『Lamentation』をガンガン吹きまくり、吹き終えると、これは『ど演歌の如きジャズ』ですと語り始めた・・・
確かに演歌のコブシを回すようなサックスの響きと、演歌のサビを思わせるようなリフレーンと熱気の高まりに、ついつい引き込まれてしまった・・・
そうか、川嶋哲郎さんは『ジャパニーズ・ジャズ』を指向して研究して来たことをライブで実践しているのであろうか・・・
川嶋哲郎さんは、故郷・富山の話を始めた・・・富山湾は深海で海水浴の砂浜海岸でも遠浅ではなく、直ぐに深くなってしまうと話した。私も学生時代に兄の住む富山を訪れまだ小学生だった甥っ子二人を連れて海水浴にやって来たことがある。
その時、海が直ぐに深くなるので、あまり泳ぎが得意でない私は甥たちが海に入らないようにと注意を払い、随分神経を使ったことを思い出した・・・そのやんちゃ坊主だった甥も還暦を迎えることもできず、今春58歳で亡くなった。
川嶋さんは、北アルプス連峰に降った雨や雪が川となり、栄養豊富な8本もの川が、富山湾に注ぎ込んでいると話した。
私は神通川の河口で大きなウグイを釣ったことがある。その頃は、まだ神通川の公害が騒がれる前だったと思う・・・
川嶋哲郎さんは、こんな話を前置きにしてから『Thaw(雪どけ)』を演奏した。春になると雪が緩み、ポタリ、ポタリと雪が溶けだし、小さな堰となり、堰が集まり小川となり、やがて川に注ぎ込む・・・私は、雪国秋田で育ったので、目を瞑って聴いていると、そんな風景が目に浮かんできた・・・
川嶋哲郎さんは、ジャズではなくタンゴの曲ですがと言って『オブリビオン』を演奏した。
そしてフルートは13年間鍛錬してきたと話して演奏したが、好い音色を聴かせてくれた・・・
フルートを吹きながら、更に高い音をスキャトで歌った・・・吹く歌う、吹く歌う、そしてまた吹く歌う、こんな光景は初めて見た。
そして曲のフィニッシュでは、大きく仰け反り倒れんばかりであった。最後はふわっと倒れそうになるんだよと語った・・・
最後に童謡『浜辺の歌』をジャズにアレンジして聴かせてくれた・・・曲の初めにサックスで浜辺の波の効果音を出し、それから浜辺の歌のメロディから始まった。そして次第にジャズ風アレンジが色濃くなり、川嶋さんと茜さんの掛け合いが始まった。まるで楽器を使った会話が始まったのだ。
そして、長いやり取りの後、浜辺の歌のメロディに戻って終わった。
今日は、川嶋哲郎さんのトークで興味深いお話を聞いた。彼が洗足学園の講師でもあり話の内容が解り易く論理的であった。
また、その取り組みの姿勢は、大いにチャレンジ的であることも伺えた。
彼が海外でライブに飛び入り参加した体験で、言葉は通じなくともサックス一本で会話できたと語った・・・
ピアノの茜さんは川嶋さんと今回で二度目の共演だというが、一緒に演奏すると相手の人柄や考え方が判ってしまうので、丸裸にされてしまうと、茜さんは漏らしていた・・・
アンコールでは『故郷』をジャズで聴かせてくれた。このアレンジも素晴らしく、茜さんはアドリブで『赤とんぼ』なども織り交ぜながら、『ジャパニズ・ジャズ』に仕立ててくれた。とてもジャズライブであった。
ライブ終了後のサイン会で川嶋哲郎さんと少し言葉を交わすことができた。私の兄が岩瀬浜の近くに住んでいるので、何度か富山に行ったことがあると伝えると、『私の家内は岩瀬浜の近くの出ですよ。』と彼が言った。
こんなことで、川嶋哲郎さんが身近に感じれるようになった・・・
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