第15回 賢治と歩む会  2018.4.28

「祭りの晩」と「山男の四月」

 4月28日は、息子が蕨のOur Delight でのジャズライブを予約してくれていたが、私は「賢治と歩む会」に参加した。この会終了後でも夜のライブには間に合う時間ではあったが、萩原先生との懇親会も楽しみだったので、ジャズライブは諦めた…息子は友人を誘ってライブに出かけたようでした…

 この日は、異常に暑かった…半袖のシャツを着て、自転車を漕いだ…

少し汗ばみながら10分ほど自転車を漕いだ。着いてみると自転車置き場の近くで萩原先生が一服していた…いつものパターンだ…

 先生と挨拶を交わし、私もポケットからケントを取り出し一服した…

 今回は童話集「注文の多い料理店」に納められている「山男の四月」が課題に取り上げられたが、萩原先生から「祭りの晩」も一緒に取り上げるようにとアドバイスがあった。

 私も「第14回 賢治と歩む会」のブログを書く時に「祭りの晩」を読んでみて、やはりこの作品を先に読むべきだと思った…

 今回は埼玉新聞で「賢治と歩む会」の記事を読んだと言う方が参加した…こうして賢治フアンが増えることは嬉しいことだ…

 参加者の多くが、それぞれに山男に関するイメージを語った…それだけ得体の知れない山男に対して読者それぞれの想像を描きたてるところが賢治童話の魅力なのであろうか…

 皆さんからの感想の発表が終り休憩となった…先生と私にとっては、モクモクタイムである…先生に花巻の鈴木さんと一緒に「賢治 秩父路の旅」の計画を持ちかけると、是非とも鈴木さんと秩父路を巡りたいと言ってくださった…

 おそらく、これまでの鈴木さんの実証研究に基づく論文を読んで、萩原先生ご自身の研究姿勢との共通点を感じておられるのであろうと思った…

< 山男の正体は… >

 まず、萩原先生は山男の正体を解き明かしてくれた…

1.山男の特性

① 山の中に住むが、定住はしない

② 貨幣は使わず、物々交換で生計を立てる

                ③ 純粋で正直(人が良く、嘘をつかない)

                ④ 人との交渉は殆どない

 こうした特性から山男は畏怖される存在で、ある種の力・霊力を持っていると信じられてきた… 

 2.山男の風評

 ① サンカ(山窩) 三角 寛 著作

   山窩小説三部作『怪奇の山窩』『情炎の山窩』『純情の山窩』を発表

 ② 山の神 田の神 :同一の神様

   山の神は春に山から下りてきて田の神となり、秋に山へ帰って行く

 ③ 山の神は女性で嫉妬心が強い

   マタギは山の神に醜いオコゼをお供えする(秋田の田舎では煮干し)

3.紫紺染めについて

・盛岡の名産品であったが、アニリン剤の普及

 によりすたれてしまった…

・山男は紫草(むらさき)を売って酒を買った

・山男に酒を呑ませ紫紺染めの手法を教わる

 山男は濁酒で育ったので、呑むと覚醒する

 

 賢治は、この伝承も知っていたにいたに違いないし、おそらく色々な属性を組み合わせて山男のイメージを生み出しているではないかと、先生は語った。

 ですから、皆さんが「山の神、山に住む人、山猫」などとそれぞれ想像することは決して間違いではないのですと付け加えられた…

 「山男の四月」には支那人という言葉が登場するが、賢治がこの童話を書いた頃には、支那人に対して卑賎意識はなく、奇術師など珍しい人であった…支那人という呼び名に卑下の意味が込められるようになったのは日中戦争以降であると解説された…

 「山男の四月」はイーハトーブ童話を集めた「注文の多い料理店」の冒頭に掲載する予定だったとう。あまり肥沃でもない土地を耕し貧しい暮らしを続けざるを得ない農民を目の当たりにしながらも、賢治は「ドリームランド」としての岩手県を描きたいとの思いから「祭りの晩」も既に書かれていたであろうと萩原先生は解説してくれた…

 

 この「山男の四月」では支那人に騙され薬を呑まされ「六神丸」にされてしまっても山男は、行李の中で大声を出さず、この支那人を苦境から救った…

 「虔十公園林」の虔十は隣の平二に黙って殴られていたが、この山男にすでに虔十の心・デクノボー精神が芽吹いていたのではないかと私は思った…