麻衣ちゃんって知ってますか

 8月末日に息子に連れられて”倉木麻衣15周年記念イベントに出かけた。最初は車で行こうと思ったが、安全な電車にした・・・高崎線で熊谷から浦和乗り換え、京浜東北の南浦和から 武蔵野線で越谷レイクタウン駅までの約1時間半の旅程である。ここは近年に開発された三階建ての巨大なショッピングモール街である。その上、広大な屋外駐 車場を挟んでアウトレットモールがあるので、多分一日がかりでも見て廻ることができない程に広さである・・・

巨大ショッピングモールの入口
巨大ショッピングモールの入口

 着いたのは11時半頃であったが、まずは会 場を探し当てようと2階のフロアを歩き始めた。会場は、花の広場、水の広場を通って一番奥の木の広場まで10分程も歩いたような気がする。そこは直径20 メートルくらいの吹き抜けのイベントホールで、2階、3階も観覧できるようになっていた。1階に降りて会場を確認し、早速ニューシングル2枚を買い求 め”倉木麻衣とのハイタッチ券”をゲットした。これで一安心と一休みしようと外に出ようとしたら、スーパーの駐車場ほどの広さに各社の新車がズラリと展示されていた。

1階ホールイベント会場
1階ホールイベント会場

 それから昼食にしようとレストアン街を歩いたが、お目当てのピザ屋は見つからず、その日は肌寒い日だったのでラーメンを食べる ことにした・・・”山頭火”と俳人の名前がついたお店でしたが、イオンカードを示すと大盛りとかご飯とかのサービスが付いてきた。食事を済ませブラブラ歩 きながら会場に着いてみると、2階の観覧席は満杯の状態で時既に遅しであったが、何とか二人分のスペースを見つけ、広告を敷いて座り込んだ・・・

確保した2階の観覧席から
確保した2階の観覧席から

 15時の開演まで2時間もあるが、場所をキープするためにそこに留まることになった。ホールの立ち見席は8時から並んで整理券を貰うのだというし、座って見るほうが私には好都合だと思ったが、それにしても時間が有りすぎる・・・そこで、半袖の私には少し肌寒く感じたのでカーディガンでも買おうと席を立った。少し行くと馴染みのブランドのショップがあったので立寄りカーディガンを見つけたら、スラックスまで買う羽目になってしまった。その上、裾をつめる必要があったので”花の広場”まで戻って店を探し当てて依頼したのだが、帰る方向を定めるのに戸惑う始末であった・・・

 会場に戻ってみると開演1時間前だというのに1階のホールは、ほぼ満杯状態になっていた。こうしてまで倉木麻衣のイベントに参加するには、私にも訳があったのです・・・

 息子は麻衣ちゃんが立命館に在学中からのフアンで、彼女の作詞に魅せられていたのだという。その後、彼は胸を煩い大学病院の教授から厳しい診断を受けた。それ以来私は彼を車椅子に乗せて麻衣ちゃんのライブ通いが始まった。最初は群馬の前橋だったような気がするが、途中で大雨にあいコンビニに駆け込んで凌いだこともある。東京国際フォーラムも2回程出かけたが、一人で車椅子でやってくる元気な若者とも顔なじみになった。ある時フォーラムから東京駅に向かう地下道を車椅子を押して帰る時、長い階段に出くわして引き返そうか、どうしょうかと思っていたら、通りがかりの中年男性二人に持ち上げてもらったのを覚えている。ありがたかった。冬の寒い頃、さいたまスパーアリーナのライブにも行った。・・・

 それでも彼はライブで麻衣ちんに元気をもらうことを楽しみに生き抜いた・・・それから3年が経ち大手術を受けて、自分で歩けるようになったのである。術後の3月中旬の冷たい赤城おろしの中リハビリ歩行訓練を始め、桜の蕾がほぐれて満開へと移って行く荒川土手を毎日散歩した。万歩計の数値も徐々に伸びてゆき、その記録をExcel表にまとめ、1週間に一度主治医にメールで報告する日々が続いた。この日課の散歩にも麻衣ちゃんの歌を聴いていた・・・

 こうして5年前から車椅子を使わず歩けるようになり、2年前からは2キロ近くを自転車で通勤している。今日、麻衣ちゃんとのハイタッチの時にお礼を言いたいと思ってやってきたのだ。

 15時の開演時間が近づくにつれて、会場は次第に熱気を帯びてきた・・・そして「マイケー、マイケー・・・」といつものマイケー・コールの大合唱の中、倉木麻衣が黒いドレスで登場してきた。以前は、Tシャツにジーパンが彼女の舞台衣装だったのに、最近は大人の装う衣が多くなってきた。デビュー15周年記念の新曲発表に6人のバックダンサーが見事なパフォーマンスを見せてくれた・・・ダンサーは三々五々やってきて、開始直前にこの狭いステージで簡単なリハーサルをやっていた・・・後で気づいたのだが、麻衣ちゃんの立ち位置にマークが貼られいた。そこからの距離感だけで、6人のダンサーが手を伸ばすと触れ合う程の狭いステージに立ち、激しい動きのバックダンスを見事にシンクロさせて見せてくれたのだ。これがプロがなせる技かと感心させられた・・・撮影禁止で写真をお見せできないの残念である。

 3曲だけのステージの1曲のために6人のダンサーやってきたのか、何だかもったいないような気がして、心残りであった・・・それから麻衣ちゃんとの”ハイタッチ会”が始まった。まずは特設会場の特別会員からスタートしたが、その他は通路に整列して待つことになった。順番は長い長い列の中程であったろうか、1時間ほど経ってやっと列が動き出した。私は立ち続けるのが辛くなり、列脇のソファに腰掛けて列の動きに合わせて場所を変えながら待った・・・麻衣ちゃんにどんな言葉でお礼を言おうかなどと思案しながら・・・

 やっと会場にたどり着くと中の雰囲気に圧倒されそうになった。その興奮状態の中、順番がくると手荷物をカゴの中に入れ、手を開いての安全確認である。そして”ハイタッチ券”を渡して横にスライドするとそこに麻衣ちゃんが待っている。息子が麻衣ちゃんに励まされて元気になったことのお礼の言葉をあんなに考えて、心の中で繰り返していたのに・・・両の手でハイタッチしたら「ありがとうございました。」としか言えなかった。麻衣ちゃんの手のひらは、意外に小さくて冷たかったのが印象に残った・・・

 全員とのハイタッチが終了し、フィナーレの時を待った。そして最後に麻衣ちゃんがアカペラで会場のフアンと合唱した「・・・傷つくことを恐れず今は 勇気を持って 君を生きてみようよ 僕はいつでも そばで見てる chance for you・・・」麻衣ちゃんフアンのテーマ曲のようなものだ。そして新曲なのにフアンは歌詞を暗唱し大合唱になったことで、麻衣ちゃんが感動して声を詰まらせてしまった・・・やはり、詩を書くような人は感受性が強いのかなあと思いながら、私もこみ上げてくるものを感じて、その場に立ちすくんでいた・・・