近所のスパーが募集したバスの日帰り旅行に家内が、数か月前に応募して当選してしまった・・・家内一人で参加させるのも心配だったので、前々日に追加で申し込んだ。
当日は、熊谷駅南口に朝7時半に集合し、総勢41名のバスツアーがスタートした。ルートは東松山から関越に乗り、中央道を経由して山梨に向かい、順調に走行し2時間弱で最初の目的地に到着した。
○ スーパーの募りし日帰りバスの旅行く手も知らず妻に添い行く
高速を下りてすぐの所に”わさび漬センター”があった。到着すると、お店の案内嬢がバスの昇降口でマイクを握り、長々と商品紹介が始まった。
社内で足踏みをしている人もおり、早速お手洗いを目指す人が多かったが、待ち受けていたのは、お土産品の数々であった・・・
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高速を下りて立寄りし「わさびセンター」下車を妨ぐ口上長し
○ 七種ものわさび漬けをば試食して三種選びし旅の始めに
○ ワイナリー「モンデ酒造」の酒蔵に十年ものの樽の音聴く
○ 樽ワイン色と樹の香を浸み込ませ嵩の減りしは神の分け前
○ ワイナリー試飲重ねて紅葉バスに揺られてしばし微睡む
○ 「里の駅いちのみや」にて昼食の陶板焼きの湯気立ち並ぶ
○ 山梨のほうとう食すチャンスなく ほうとう麺を贖ひて帰りぬ
早めのお昼を済ませ、バスの中でうとうとしながら、河口湖へと向かい、ほどなく河口湖に到着した。
最初に訪れたのは「オルゴールの森ミュージアム」である。そこはスイスの山村をイメージした建物と庭園の中にあった。博物館の中には、年代物のオルゴール、人形、ミニチュアのお城などが展示されており、乙女チックな世界であった。
○ バイオリンとピアノを奏でる演奏機 百年前の音色響かす
20世紀初頭に製作されたいう機械式の演奏機による演奏を聴いた・・・
ボックスの中に3つのバイオリンが組み込まれ、円形の弓がバイオリンを弾き、機械式の指が弦を押え振るわして音を奏でる様子が、モニターに映し出された・・・その楽譜は幅広の紙テープに穿孔された穴の並びでプログラムされている。これが100年も昔の匠の成せる技かと感心させられた。
○ 時告げる調に合わす噴水の冬陽に輝く「オルゴールの森」
○ 河口湖の水面のさざ波きらめきて富士の山の端くっきりと見ゆ
○ 河口湖の紅葉祭りの人波に「きみまろ茶屋」の幟はためく
○ 河口湖の大橋渡りバス行かば冠雪きらめく富士の迫り来
○ 信玄餅の総本家たる「金多留満」伏流水を代々使へり
○ 甲州路旅の終わりの和菓子屋に暫し休みて夕富士見上ぐ
○ 甲州路芒の枯れし霜月の逆光の富士黒く逞し
秋の日暮れは早い、4時頃には夕闇が迫って来た。秋晴れに恵まれて、雲の無い富士山を存分に眺められたことの満足感と程よい旅の疲れもあって、バスの座席の腰をおろし帰路に着いた・・・私は、ラインのプロフィールに冬の富士山の写真を載せていた友人を思い出した。彼は大学時代に学友会の会長を引き受けてくれて、それ以来の付き合いである。今は、生まれ故郷の山梨に別宅を作り、毎年美味しいトウモロコシを送ってくれ、いつも「遊びにおいで!」と添え書きあった・・・私は、バスの中から「今日、河口湖に来て、帰るところです」とショートメールを送った。「夏には遊び来いよ」とほどなく返事が来た・・・
そして、甲府にいる同期の笹川さんの所からは、富士山はどうなんだろうかと思いをめぐらした。私も同様であるが、笹川さんも生まれ育った故郷で過ごした歳月よりも、現在の暮らしが長くなったのではないでしょうか・・・
笹川さん、近所からどんな富士山を眺めているのでしょうか・・・
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鈴木 守 (火曜日, 25 11月 2014 08:51)
小南様
お早うございます。
花巻も大分冬らしくなってきまして、今はコタツに入っております。熊谷は如何ですか。
ブログを拝見しまして、快晴の下の河口湖への紅葉狩り、その旅の様子が遠く岩手にも伝わってきております。さぞかし、楽しい一時を過ごされたことと存じます。
さて、私は短歌はたしなんでおりませんのでその鑑賞力はないのですが、駄句を毎日一句心がけている俳句派の私からすれば、特に
○甲州路芒の枯れし霜月の逆光の富士黒く逞し
に惹かれました。
すぐにその情景が目に浮かび、逆光の中に己の最後を煌めかせている微かに揺れる枯れ芒の穂と、その向こうに微動だにせぬ富士との対比が見事だなと思いました。しかも、その富士を黒と表現し、黒い富士に逞しさがあると言わせていることにです。さらには、そこが甲州路ですから旅情と詩情が伴っております。
そこで、小南さんは『甲府にいる同期の笹川さんの所からは、富士山はどうなんだろうかと思いをめぐらした』ということのようですが、私もつられて思いめぐらしました。実は、今から15年ほど前だったでしょうか、笹川を訪ねて行って甲府に一泊したことがあります。その時の富士を思い出し、あるいは、同じ講座の同じ年齢の笹川からいつも私が人生の何たるかを教え諭されていた学生時代のことを、です。
末筆ながら、向寒の折どうぞご自愛下さい。
鈴木 守