「日本の七十二候を楽しむ」によると7月1日から6日ごろを「半夏生ず」(はんかしょうず)と言い、田植えを終わらせ、農事の節目とされるころに半夏(からすびしゃく)が生えはじめるという・・・
今日6日にまたSPACE1497にやってきた。夕刻、まだ薄明るかったので、庭の奥の木の下にベンチに座って見たくなり、腰を下ろし一服した。蒸し暑い一日であったが、青田を渡ってきた風がひんやりと頬を撫でて行った・・・
ぼんやりと辺りを眺めているとオーナーがテラスに置かれた蚊取り線香に火を灯していた。それからパラソルの下の椅子に座っていた息子と話し込むオーナーを暫く眺めていたが、私も話に加わった・・・私は初めてライブの予約の電話をした時の話をした。「鈴木良雄とベーストーク」のライブであったが、その時の主の声は風邪でも引いているようであったと話すと、「主人は肺を患って亡くなった」と聞いて、娘さんではなく先代オーナーの奥様であることを知った・・・
それから鈴木良雄さんと早稲田の”ダンモ(モダンジャズ研究会)”の同期だった会社の先輩のことや新宿「Jスポット」のバードマン幸田さんのことを話すと、何と先代のオーナーの頃から幸田さんとの付き合いがあり、多くのジャズマンの紹介を受けSPACE1497に招いて来たと話してくれた。今度「Jスポット」へ行ったら熊谷の坂巻のことを幸田さんに伝えてくださいと話していた。やはり女性オーナーもジャズの話になると詳しくて話も弾んみ、何だか嬉しくなってしまった・・・ただ、今日は若いメンバーの「Bungalow」を応援したいのだが、集客に苦労していると携帯で馴染み客に呼び掛けていた・・・
バンガローと言えばキャンプ地に建つ小さな小屋をイメージするが、「みんなが気軽に行ける心地よい場所、アコースティックな音」を表わすことの願いを込めて命名されたという。このグループは2008年に活動を開始し、あの3.11の東日本大震災直前の2月にお金を出し合ってニューヨークでレコーディングさてたのがファーストアルバム(Metropolitan Oasis)である。ただ、その後サックスの山本昌広氏は、家業を継ぐために大阪に帰ったという。
Bungalowのメンバーで最初にお会いしたのがドラムの大村亘さんだ。数年前に前橋のGフェースカフェで行われた鈴木良雄とゼネレーション・ギャップのライブである。
その時、オーストラリアのシドニーで活躍していたドラマーだとChinさんが紹介してくれた。大村さんに「あの頃はお鬚はありませんでしたね」と話しかけると「まだつるつるしてましたよ」とほほ笑んだ。
サックスのKokesu歩美カルテットが熊谷郊外のコンサートホールにやって来た時に佐藤浩一さんのピアノ演奏を聴いている。息子がCDにサインしてもらう時に少しだけ言葉を交わした。その時の第一印象は、ピアノの音色と同じように優しい人柄であるように感じた。
そして6月17日に洗足学園音楽大学の「Do Jazz」で再び佐藤浩一さんのピアノを聴いた・・・やはり、シャープで澄んだ音色で心地よい世界に誘ってくれた。
今晩も多いに楽しみである・・・
ベースの池尻洋史氏は千葉県生まれで、千葉大モダン・ジャズ研究会に所属し山下弘治氏に師事しベース奏法に磨きをかけたとジャケットにあった。6月20日の山本剛と与世山澄子のライブの時のベースの香川裕史さんも確か千葉大のジャズ研出身であったが、ジャズが盛んな大学のようだ。この写真からも窺えるように池尻さんは実直なお人柄のようですが、スウィングするベースには引き付けられる・・・
今日は池尻さんがライブの司会であった。
バンガロー結成当初からのサックスの山本昌広さんが、個人的な事情で音楽活動を休止されて、2014年からテナー・サックスのマイク・リヴェットが加わり、2015年1月には「アンシーン・シーンズ」がレコーディングを果たしたとジャケットにあった。
今回のツアーでは、4回目のライブですと池尻さんが紹介した。彼も大村さんと同様シドニーで活躍しているそうであるが、彼のサックスを聴くのは初めてである。 すらりと背の高い彼は、全身をくねらせてサックスを吹いた・・・
その音色は伸びやかで力強く、心地よく響いてきた。
池尻さんがマイクは器用な人で「エレクロトニクス」も扱えますよと紹介してくれた。
このエレクロトニクスのパネルには、スライドやヴォリュームのつまみが沢山並んでいて、PCとLANケーブルで接続されていた。
マイケルは、このデジタル機器を操って、様々な効果音を生み出してくれた・・・
鳥の声、せせらぎ、風の音、波の音・・・
池尻さんが、年に3ケ月はインドに修業に行っていると大村さんを紹介した・・・
亘は、ここ数年何度もインドに足を運び、2015年には、文化庁の新進芸術家海外研修制度の研修員としてインドに出かけた時には、出鼻をくじかれるかの如くの発熱、下痢、嘔吐しながらも、タブラ奏者としての修業を続けてきたという。
CDへのサインをお願いした時に息子が、池尻さんにセットリストを知りたいと頼んでいたが、ライブを終えてから楽譜を見ながらメモしてくれた・・・やはり、池尻さんは実直なお人柄であったと改めて思った。
今回初めてバンガローのライブを聴いたがこれまでに聴いて来たジャズと異なるものを感じていた・・・何故だろうと思いつつ、時々目をつむって聴いた・・・
大村亘作曲の「Dancing Elephant」は、リズムの変化だけで構成されているような曲を聴いていたら、何処からか象さんが出てきて、のっしのっしと象さんが闊歩する姿が浮かんできた。
このことを大村さんにお話すると、にっこり笑って頷いてくれた・・・
私は、大村さん作曲の「North Head」を聴きながら大いにイメージを膨らませた・・今WOWOWで始まった「宮沢賢治の食卓」を観ていたせいもあるかも知れない・・・「第3話 恋の鳥南蛮そば」では花巻女学校で開かれたレコード鑑賞会のシーンで、賢治はベートーベンの「田園」を聴きながら、彼の心に写った心象スケッチを語りだすのであった・・・
私は「バンガローの曲には物語がありますねぇ!」と佐藤浩一さんに話しかけた。すると佐藤さんが大きく頷いてくれたので「宮沢賢治に聴かせてみたいですね・・・賢治だったらどんなお話をしてくれるでしょうか」と重ねて言った・・・山猫が出て来り、きのこや花や草も樹も、雲や風も登場させて、バンガローのジャズのイメージを情感豊かに語ってくれたに違いないと思った。
息子がマイクさんのサインをもらっている時に「日本語の聴きとりが上手ですね」と話しかけると「少し、奥さん、日本人」と教えてくれた。もっとも彼らは海外留学や海外生活を経験しているので英語での会話に不自由を感じないのかも知れない・・・マイクさんの演奏もすっかりバンガローに溶け込んでいるのを感じたし、曲の中で自分自身をしっかり主張しているようにも感じた。
家に帰ってから、最新のアルバム「You Alreadey Khow/Bungalow」を聴いてみた・・・これは全く新しいジャズを目指して編集されたチャレンジ的なアルバムではないかと私は感じた。彼らの目指す日本発の新しいジャズの行方も楽しみではあるが、果たして多くの人々の共感をよび、人々の心を引き付けるような「Bungalow's Jazz」へと発展を遂げられるのであろうか・・・
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